
Profile:工藤みどり(くどう・みどり)
大分県別府市生まれ。1988年に大分県山香町(現:杵築市)出身の主人と結婚し大分市にある主人の社宅に移住するも、2年後に家業の農業の後継ぎのために山香戻る主人について移住。以降農繁期などに農業を手伝いはじめ、次第農作業へのかかわりも増えていく。2012年に別府で大分県産の食材を売るコンセプトの朝市「田の湯マーケット」に参加。現在は山香で米やシイタケの栽培をするほか、自然薯などの野菜にも着手している。
百の仕事をこなす人
とにかく多様なのが工藤さんの魅力だ。
別府市の田の湯という場所で開かれる朝市である『田の湯マーケット』の常連出展者として、数年前から筆者と工藤さんとはお付き合いがある。
そのころからの印象が、『とにかく持ってくるものの種類がたくさんある』ということだ。コメをはじめとしてシイタケ、キュウリ、大根、フキとあらゆるものが出てくる。一か月に一度毎回異なる品物を持ってくる様を見ていると、荷物が積まれている工藤さんの軽自動車が四次元ポケットのように見えてくる。

『こんなにたくさんの種類を作っているなんて、どうやっているのですか?』
一度だけ、聞いたことがある。しかし、それはどうやら街の人間から見えるだけの話らしく、
「まあ、こんな感じよ~」
という答えをいただいた。おそらく工藤さんご自身にとって、たくさんの種類の野菜を同時につくるというそれは、当たり前のことなのだ。
そしてこの間、初めて工藤さんの仕事場にお邪魔した。山香という大分県の中でも内陸に位置する場所だった。「里山」という表現がぴったりの場所で、人と自然とがひとところに集まって共存している。近くをJRの本線が走っていて、たまに通る特急が実に絵になるものだった。
「あれが自然薯を去年やった畑。あそこに行けばフキが生えているよ。…あの木は栗の木だね。あっちはカボス」

晴れていて、外を歩いているだけで心地よくなるような日だった。そんな中工藤さんはご自分の土地を紹介してくれた。そこには、確かにたくさんの野菜が植えられていたし、そうでなくても、来るべき夏に備えた準備がされているものがほとんどだった。
古来より日本の農家は、複合的に何種類もの野菜を育て、コメを作り、時に内職をして暮らしていた―そしてそこから百の仕事をこなすという意味で百姓という名前が付いた―。そんな話を聞いたことがある。日本の農家は元来、マルチタスク的な側面を持っている。

工藤さんの場合は主力こそ秋に取れるコメとシイタケの原木栽培だが、その脇には何種類もの野菜が複合されていることを忘れてはいけない。そんな野菜たちは買い手にとっても新しい知見への扉が開くものだ。普段買わないような野菜も、買って「やってみようかな」と思わせてくれる。
インタビュー
~現在動画を鋭意作成中です。しばらくお待ちください~
Q:お仕事を始めたきっかけを教えて下さい。
結婚をきっかけに農業に携わることになりました。もともと主人が働く大分の社宅にいたのですが、家業であった農業を継ぐということで山香へと戻ったのです。それ以降、子育てや家事の傍ら、繁忙期に農作業を手伝うなどをして農作業に携わり始めました。
Q:商品を生産する際、最も大切にしていることを教えて下さい。
安心、安全に最も気を付けています。極力農薬を控える方向で農作業を行っています。まだ完全無農薬とまでは至っておりませんが、可能な限りお客様の体の安全に気を使った食材づくりを目指していきたいと思っております。
Q:最後に、商品を届けるお客様への思いをお聞かせください。
相手が笑顔になる野菜、お米作りを目指しています。食べて喜ばれるようなものを作りたい。だから必要最低限の農薬で野菜を作りたいし、なるべく朝市に顔を出して直接作ったものを手渡しして感想をもらったり、できる限りお客様の笑顔がもらえるように意識をしながら製作を進めています。