生産者紹介:合同会社新栄丸/宮本信一さん

Profile:宮本信一(みやもと・しんいち)
 大分県佐伯市大入島出身。一度島を離れるが結婚を機に故郷の大入島に戻り養殖に従事、好きだった潜りを仕事にしたいと志す。2006年に独立。2009年にナマコの加工を開始、2011年に海藻の加工を始めるなど事業を拡大していった。しかし当時の商法では利益率も低く、島の課題である漁師の後継者育成と過疎化のストップに歯止めがかからないという危機感から、2013年に収穫から加工までをすべて行う販売スタイルへと変化させた。2018年にオリジナルブランドの養殖真カキ、【OONYUJIMA OYSTER】を設立した。

島と海と牡蠣を守る

 穏やかな内海に浮かぶ島々。山と海、そして人々の営みが見える街並み。瀬戸内の風景には、自然が豊かでなおかつ人間の営みをはっきりと認識できるような、安心できる光景が一面に広がっている。

 しかし、そんな穏やかな風景を大分でも見ることができるということを知っている人はあまり少ない。大分県最南端に位置する佐伯市がそれにあたる。人口7万人の小さな街は、古くから漁業で栄えた。江戸時代には佐伯藩という藩が単体で置かれるほどの実力を持っていたほどである。

 牡蠣の養殖を営む宮本さんが住む大入島もその一つだ。対岸に本土を据え置き、島であるという利点を生かして一時期は3000人を超える人が暮らしていた。これらは全て魚によって成立していたといっていい。面積僅か5㎢ほどの小さな島にこれほどの人が暮らしていたのは、島だけではなくその周囲の資源をよりどころにしていたからだといえる。「島」というものは水面から上だけで語ってよいものではないということだろう。

「この辺りは海の見た目がきれいな割にプランクトンが多いんです。雨が降ると島や本土の森から栄養が海に入ってくるからです。だからそれを餌とする良質な牡蠣が育ちます」

 たくさんの栄養が海に集まり、それが豊富な魚介類の住みかとなっている。それが大入島でたくさんの人が暮らしていけた理由なのだろう。

▲牡蠣はサイズごとに分類され出荷される。その仕分けも機械の助けを借りている

 ところが大入島は今、危機に瀕している。原因は山や海によるものではなく、人間の社会の変動によるものだ。人口は約600人に減少し、そのほとんどが高齢者である。島の基幹としてこれまで成立してきた漁業もこの高齢化の煽りを受けて減少の一途をたどっている。

「ぼくが島に来た頃、この島の人口は1800人いました」

 宮本さんはこう語る。小学1年生のころ、父親の仕事の都合で島に来た。一度本土と往復を経験したが、島のことは良く記憶に残っていた。島の海に潜って遊んだのが、とても楽しかった。

 ずっと島で何百年も続いてきたであろう光景。しかし、それが消滅するかもしれない。地方の過疎化と少子高齢化の問題は、宮本さんにとっては自身の故郷のリアリティそのものだった。

 島の漁業を、人の営みを、維持させなければならない。高校からは島の外に行っていた宮本さんは、21歳の時に島に帰る決断を下す。2006年に独立して漁業を始めた宮本さんはその一心で自身の漁業を改良していった。

「養殖カゴで制御しているため、牡蠣殻に付着する海藻や砂、フジツボなどの付着物をつけずに育てることができます。これにより牡蠣の殻を汚さないまま育て、お客様のもとへ送り届けることができます」

 異物を完全に排除する。これで本当に純粋な「牡蠣」を楽しむことができる。この実現こそ宮本さんの一つの理想だ。そしてこれも、新たに導入した新技術によって効率化されている。

「月に一度の貝毒プランクトン調査やノロウイルス検査を行い、生食のための安全を常に確保したうえで出荷しています。また細菌検査も行うなど、安全性には常に気を配っております。過去三年間、ノロウイルスの発生はありません」

 安全性を確保して安心できる生食を提供することも宮本さんが担っていることである。牡蠣に付きまとう食あたり等のリスクを排除し、安全な生牡蠣の提供をする。

▲一見廃棄物に見える牡蠣殻も肥料として使える貴重な資源だ

「海外の技術を取り入れることで、養殖カゴは徹底的に効率化されています。また新技術の導入で牡蠣を、鮮度を失わせず瞬間冷凍して全国に配送できます」

 徹底された技術は、美味しい牡蠣を消費者に届けるため。そして、島の風景を守るため。島で養殖された牡蠣はこうして全国へと出荷されていく。

 取材中、牡蠣を何個かいただいた。そういえば最近、家でビールを飲んでいない。なんとなく飲まなくなったのだが、良いツマミが見当たらなかったというのも理由の一つだった。いただいた牡蠣は身が詰まっていて、酒の肴には一番良いのではないかと思った。また家での晩酌を楽しみとしたくなってきた。

インタビュー

Q:お仕事を始めたきっかけを教えて下さい。

 小さいころから海に潜って魚や貝を捕るのが好きでした。その延長線上で大人になっても潜ってものを捕る仕事がしたかったのです。子供のときからの遊びの延長線上ですね。それが遊びのなかで一番楽しくて、それを仕事にしようと思いました。

Q:商品を生産する際、最も大切にしていることを教えて下さい。

 いいものを作ることを常に心がけています。牡蠣にしてもナマコにしても、養殖したり捕ってきてから加工をするという過程を弊社ではしております。しかし、最初から加工技術が高いものは作れなかったのです。香港の市場に自分の商品を見せに行った際、周囲のレベルの高さに愕然としました。
 そこから試行錯誤を重ね、失敗を積み重ねつつ、今の形を作り上げることができました。これからも創意工夫を重ね、美味しい牡蠣やナマコを作っていけるように努力していきたいと思います。

Q:最後に、商品を届けるお客様への思いをお聞かせください。

 やはり「美味しい」と言ってもらいたいですね。それが私たち生産者にとって最も大きな喜びです。美味しい牡蠣を皆様に送り届けられるように頑張っていきたいと思います

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ABOUTこの記事をかいた人

OSPのライティング担当。文章は仕事でもあり楽しみでもあると思っている。趣味はバイオリンの演奏とアニメの視聴。最近モテるために椎名林檎を練習し始めたが効果を確認できたことはない。